美術とオカネ、語られてこなかったタブーに迫る映画『アートのお値段』。
ヒット上映中の映画『アートのお値段』。ご覧になりましたか? Pen本誌の映画評でも取り上げましたがここでも改めて紹介を。なぜなら、今年2/1売号(2019/2/15号)のPenは『アートの値段』特集。「お値段」と「値段」、「お」の有り無しの差こそあれ、同じテーマを取り上げた映画に肩入れせずにいられません!
アーティストは作品を売って収入を得る。展覧会で見る絵も、誰かに売られて買われてここにある。教科書に『モナ・リザ』の値段は書かれていないけれども、アートのお金の話は重要。そう考えてPenは取材を始めたのですが、まあこれが難しい。美術の歴史や作家については語ってくれる美術館も、作品の「購入」についてはノーコメント。だからナサニエル・カーン監督が追っていく、美術品とその売買を巡る人々のドラマにぐいぐい引き込まれました。アーティスト、コレクター、オークション会社など、各々が実に赤裸々に発言しています。100人以上アシスタントを抱えるジェフ・クーンズの制作スタンスや、ゲルハルト・リヒターのアート売買についての率直なコメント。売る戦略を冷静に明かす一方で、好きな絵のスクリーンショットを落ち込んだ時に見られるようにと携帯電話に保存するオークショニア。価格だけでは測れない美術と人の根本的な関係が見えてきます。ジャン=ミシェル・バスキアの作品が約123億円で、前澤友作・ZOZO社長(当時)に競り落とされた話題のオークションシーンも映画に登場。この時の作品は、9月21日から始まる『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』(森アーツセンターギャラリー)に出品されます。いままさに、見ておきたい一本です。
公開劇場のひとつ、渋谷・ユーロスペースではPen『アートの値段』特集号を販売中。この特集では、現代アートに加えて伊藤若冲など、歴史的な美術の値段についても取り上げました。フランソワ1世の『モナ・リザ』購入価格も紹介しています。読めば、映画がますます面白くなること間違いなし。映画とPenと、どうぞ併せてお楽しみください。
『アートのお値段』
監督/ナサニエル・カーン
出演/ラリー・プーンズ、ジェフ・クーンズ、エイミー・カペラッツォほか
2018年 アメリカ映画 1時間38分
渋谷・ユーロスペースほかにて公開中。
http://artonedan.com/
※参考
● Pen「いまこそ知りたい! アートの値段。」2019年 2月15日号 No.468
● Pen「ニューヨークを揺さぶった天才画家、バスキアを見たか。」2019年 10月1日号 No.482